ボール支配率69:31、シュート数17:7、CK数5:1。スコア=0:2。ボールを保持し、シュートを打った方が負けとなったゲーム。ボールを保持していれば負けないという理論が空しく響く。
16-17ヨーロッパリーグファイナル、アヤックス・アムステルダムVSマンチェスター・ユナイテッド。ヤングアヤックスというサブタイトルがつくように、アヤックスは20代前半のアカデミー出身選手が主力。ユナイテッドは、300億以上のお金をかけてビッグネームを寄せ集めた、悪く言えば「金満クラブ」両チームともにヨーロッパの名門である。
ユナイテッドは、サー・アレックスファーガソンによって先進的な攻撃的フットボールを展開していた。アヤックスは、言うまでもなくクライフイズム、バルサの源流となったポゼッション・フットボールを基本とする攻撃的フットボールの代表的クラブだ。
ポゼッションフットボールは、バルサによってスタンダードになり、世界に広がった。パスとスペースによって敵陣を切り開く攻撃は、美しいと感じた。プレッシングは、相手を無力にする守備だった。だが、ユナイテッドの「スペシャル1」は、アンチフットボールと揶揄される「リアクション・フットボール」によって、ポゼッション・フットボールを封じる手段を開拓した。2ラインディフェンス+カウンターという戦術で。圧倒的なポゼッションで世界を席巻したバルサを封じ込めた戦術は、美しくはないが、勝利の方程式とでもいう様な戦術となった。かつてのカテナチオよりもイタリアらしく見える戦術だった。
アヤックスとユナイテッドの戦いは、華々しい攻撃的フットボールが見られるという期待を簡単に裏切った。「スペシャル1」とユナイテッドのチーム事情は、そんな攻撃的な戦術をとることを許さなかった。「勝利」というノルマを課せられたユナイテッドは、只々勝利のためになりふり構わぬプレーに終始した。アヤックスにボールを持たせて、自陣に控えて網を張り、個人力(技術とは言いにくい)でボールを奪い、ロングボールでリスクを回避し、隙を伺うプレーを続ける。アンチフットボールよりも更に醜い。リスクマネジメント戦術、2得点は共にセットプレーの流れから。格下チームが格上にやる典型的なもの。300億かけてやるフットボールがこれかと思うと寂しい限りだ。ユナイテッドのアカデミー出身のラッシュフォードは、アヤックスの自慢のセンターバックに完封されて途中交代となった。
アヤックスの若さが、経験不足が招いた結果か。スペシャル1のチームは、勝ち方を知っている?本当に?こんなお金をかけたチーム、明らかに格上のチームが、絶対に負けない戦い方、アンチ・ポゼッションフットボールをやり続けた。このユナイテッドが勝者になった。
フットボールが退化してしまったようだ。ユナイテッドはきっと罰を受けることになる。来シーズンのCL出場権が欲しくて採用した戦術?元々スペシャル1の辞書に美しいフットボールは無い。只々勝利を掴むことだけが存在意義となるから。
アンチ・ポゼッションというリアクション・フットボールを絶滅させる攻撃的フットボールが誕生する日を待とう。ネクスト・ヤングアヤックスがその中心であることを願って。