サッカーのフォーメーションはトレンド(流行)で変化する。フォーメーションを3列で表記していた頃は、DF(BKと呼んでいた)-MF(HB:ハーフバックと呼んでいた/懐かしい)-FWを表す数列だったが、今は4列表記になり、DF-MF-MF-FWを表すようになった。(基本的にはこうだがDF-MF-FW-FWの場合も有)選手の配置はコンパクトになったのに表記は縦に伸びたので実態と逆行しているようだ。
4-2-3-1は、確かフランスW杯でフランスが採用したフォーメーションで3BK(ここではDFとは言わずスリーバックのほうが馴染む)全盛期に3BKを凌駕するフォーメーションとして一気に広がりを見せ世界の流行になった。3BKの欠点と言える両サイドのスペースで数的優位を作れる並びであり、攻撃が3つのルート(左右と中央)で可能となるバランスのいい布陣として今でもフォーメーションの王道としてもてはやされている。フランスW杯は開催国フランスが優勝、ジダンが世界最高選手として認知された大会となった。そのジダンを生かすフォーメーションが4-2-3-1だった。
この4-2-3-1は4-4-2から生まれたもので4-4-1-1が変化して4-2-3-1になった。(違う進化もあるが自分はそう考えている)トップ下といわれる位置にファンタジスタ(MFとしてはジダンとリケルメが最後のファンタジスタである)のジダンを配置し、攻撃はジダンのキープ力や創造性に任せるものだった。中盤(MF)をダイヤモンドにした4-4-2(4-3-1-2)もジダンが生きる並びではあるが、3-4-1-2と対峙すると中盤の人数やサイドアタックへの対応で不利になると考えられたため4-2-3-1となった。90年代に全盛だった3BKは2トップ(特に4-4-2)への対応策として生まれたもので2FWには3BKで対応すれば数的優位がありDFを1人あまらせ、カバーリングが可能になると考えられたものだった。4-4-2への対抗策として3―5-2(3―4―1―2や3―4―2―1等)が生まれ、その対抗策として4―4―2の子供である4―2―3―1が生まれたのはフォーメーションが変化する中(進化?)では必然で面白い流れです。
4-4-2は「トップ下」を置かない並びで(これだとジダンも生きなかったでしょうね。守備をあまりしませんから)セントラルMF(CMF)が中盤のダイナモ(懐かしい響き)として守備と攻撃の起点となりボール狩という守備を行い獲ったボールを味方につなぎゲームをコントロールします。この中盤2人(2枚と言ったほうがそれらしい)をボランチとは言わずCMFと言うのはボランチが役割であってポジションを言うものではないからです。ボランチはかじ取り役のことだからです。ボランチは守備的MFをさすわけではありません。4―2―3―1の2はほとんどが守備的MFであってボランチではありません。守備を専業としているMFです。イタリアのピルロは中盤の底にいてボランチの役割をしています。理屈はそうなんです。但し、守備的MFと呼ぶよりボランチと呼んだほうが響きはいいのでメディア的にはやむなしと言えます。
4―4―2が伝統的なフォーメーションであるイングランドはCMFに名手が多いですね。ジェラード、ランパード、最近ではウィルシャーもいい選手です。ガナーズにいる頃のセスクもCMFとして最高の選手でした。バルサに行ってからはセスクの良さが消えてしまい普通の選手になってしまいました。14―15シーズンは、プレミアに戻るので輝きも戻ると期待しています。モーのブルーズというのが気に入らないですが。4―4―2が最も機能したのは、サッキのミランでした。コンパクトゾーンとプレッシング、そしてダイレクトプレー。ワンタッチフットボールと呼ばれたサッキ時代のミランはトータルフットボールをよりシステマチックにしました。ポゼッションサッカーというのはあまり言われなかった時代でしたが、当時は世界最先端の戦術を実現していました。サッキは4―4―2によってファンタジスタを排除し、システム優先のサッカーを作りましたが中盤のファンタジスタは絶滅の危機を迎えてしまいました。
4―4―2の話が長くなり4―2―3―1から離れてしまいました。4―2―3―1が全盛となったのは、スペイン代表がそのフォーメーションを採用し、ユーロ2連覇と2010W杯優勝という史上初の快挙によるところが大きいと思います。ポゼッションサッカーを4―2―3―1で表現しタイトルをとり続けたことは、世界中にこのフォーメーションを浸透させました。ところが、ポゼッションサッカーと言うとオランダで生まれたトータルフットボールがその起源です。トータルフットボールの基本フォーメーションは、4―3―3(4―1―2―3)です。4―2―3―1と4―1―2―3数字は似ていますが似て非なるものです。4―3―3はブラジルの4―2―4から生まれたものと言われています。ブラジルの4―3―3は4列表記すると4―2―1―3です。このフォーメーションは、4―2―3―1に実はよく似ています。3トップの両サイドウイングが1列目にいるか2列目にいるかの違いです。4―2―1―3は4―2―3―1よりも攻撃的な布陣と言えます。但しブラジル代表が採用した時代は、攻撃する人と守る人は分かれていました。完全に6人で守り4人で攻める時代でした。4―1―2―3はボールを保持するためプレスをかけるためポジションチェンジを機能的にするものです。4―1―2―3が2―1―4―3になったり、3―1―3―3になったりします。そんな4―1―2―3がオランダの4―3―3です。そしてそれはバルサの4―3―3でもあります。スペイン代表は大半がバルサの選手です。バルサの選手は、ポゼッションサッカーを表現するフォーメーションをクラブでは4―1―2―3、代表では4―2―3―1で実践しました。ポゼッションサッカーはフォーメーションでするものではありません。クラブと代表ではチームの熟成度に違いがあります。たまに会う代表ではなかなか出来ないからですね。
4―1―2―3は4―2―3―1よりも前掛かりでカウンターを受けやすくなります。リスクは大きくなるからです。特に代表戦はトーナメントが多いので守備を意識した4―2―3―1のほうが安心だからです。その分ダイナミックな攻撃は少ないように見えます。似て非なる4―1―2―3と4―2―3―1は対峙するとマンツーマンにもなりますが、フォーメーションの主流となった4―2―3―1をクラブの戦いにおいて完全に打ち破ったのが40年前からある4―1―2―3でした。4―1―2―3はクラブのフォーメーションとしては、強者のフォーメーションとして定着しかけました。しかし、4―1―2―3は、引いて作った4―4―2という守備ブロックが有効であるという対処方法を見つけられてしまいました。ペップのバイエルンもポゼッションサッカーを追求していますが、フォーメーションは4―2―3―1です。ドイツらしいショートカウンターをミックスするのには前掛りな4-1-2-3より4―2―3―1のほうが有効と考えたと思います。バイエルンの選手が多いドイツ代表もフォーメーションは4―2―3―1です。代表と言えどもチームの成熟度はクラブ並みになっています。これはスペイン代表も同じでした。それでも代表は4―1―2―3を採用しないのはリスクが高いからだと思います。代表の価値はスペクタクルや美しさより勝利だからです。4―1―2―3を使うときは力に差があるときですかね。だからサッカーの美しさで代表はクラブに勝てないですね。そんな4―2―3―1に対応したフォーメーションがリバイバルされました。3―4―1―2です。かつて3―5―2と言われていたものです。かつての3―5―2はドイツで生まれました。イタリアで熟成されました。今度はオランダの趣向が入ってリバイバルです。3―4―3と言えそうですが、3―1―3―3のアヤックススタイルではないものです。14―15シーズンのユナイテッドに注目ですね。カガワが残らなくても(まだこの時点では不明)ユナイテッドの動向は要注意です。
今回はこのへんで