ゴールキーパーがPKキッカーの心を読んで横に飛ぶ。PKキッカーはそのダイビングをあざ笑うかのようにチップキックでキーパーの届かない場所にボールを蹴る。芸術的に見えるPKだ。1976年のヨーロッパ選手権(今はEUROと呼ばれている大会)決勝でチェコスロバキア(今はチェコとスロバキアは別の国)のパネンカが蹴ったPKだ。W杯チャンピオンの西ドイツとの決勝でPK合戦五人目のキッカーだったパネンカが蹴ったボールは、西ドイツのGKゼップ・マイヤーのダイブした上(倒れこんだ瞬間マイヤーは右手を伸ばしたが、その上を)をスローモーションのように通過してゴールネットに吸い込まれた。決まれば優勝と言う状況でこのPKが蹴れる勇気と技術は皆が驚いた。74年W杯決勝でニースケンスがゴール中央に蹴った強烈なシュートも驚きだったが、パネンカのPKはニースケンスのPKをはるかに凌駕していた。
サッカーは相手の意表をつくプレーが重要だが、力に任せて蹴りこんだボールより、技術と創造性があるプレーのほうが見て楽しい。緊張感満載の場面で驚きのプレーをすることは簡単ではない。技術も大事だが、トライする気持ちはもっと重要だ。ヨーロッパチャンピオンが決まる場面でそんなキックを成功させたパネンカ。それ以来PKのチップキックは「パネンカ」と呼ばれるようになった。
ピルロやセルヒオ・ラモスがW杯やEUROでやっている。最近はメッシも使っていた。(最近のメッシはPK成功率50%なので窮地で使ったと思う)PKキッカーなら一度はやってみたいキックだが、EUROの決勝戦で出来る選手は少ない。但し、最初にやったパネンカを超えることは出来ない。