ラウンド16を前半躓きながらも結果大勝通過した九里が浜FCは、クオーターファイナルに進む。対戦相手は高葉台FCに4-0で快勝した中房FCになった。中房FCは決して強豪ではないが、よく走る訓練されたチーム。ラウンド16でも高葉台有利の前評判を覆し、走り勝って勝ち上がった。
九里が浜FCは、クオーターファイナルまでの1週間、いつもと変わらないフットボールの日々が続いた。ミッドウィークに行われるトップ対セカンドのトレーニングマッチも予定通り行われた。結果は3-2でトップチームが勝った。メンバーを変えて臨んだとはいえ矢野に2点、枝本に1点を決められ、後半は怪我から復帰したばかりの東城まで投入したのに勝てなかった。ラウンド16で狂い始めた歯車はこのゲームも狂ったままだった。「時計仕掛けのオレンジ」というトータルフットボールを表す言葉がある。だが、歯車の狂った時計は、時計ではなくなる。狂ってしまった時計仕掛けはトータルフットボールではなくなる。狂ってしまった未来の子供達のフットボールは、楽しさという輝きを失い、力任せになっていた。
狂った原因は、そのほとんどが選手一人ひとりの内面にあった。40年後の未来からやって来た子供達は、フットボールを、フットボールの楽しさを伝えるという目的意識が薄れていた。一人ひとりの意識に強弱が見え始めていた。心が、意識がバラツキ、フットボール本来の楽しさである連携やコンビネーションにズレを生じてしまった。それでも個の力でゲームに勝ち続けたことで自覚症状がないまま病は進行していた。
負けから学ぶことは、負けから学ぶことより遥かに大きい。トップチームとのトレーニングマッチは、未来の子供達にとって狂った歯車を修正する絶好の機会だったが、未来の子供達は何の対処も出来ず時が過ぎていった。
中房FCとのクオーターファイナルは、目の前に迫っていた。中房FCは、強豪ではなかった。だから失うものはない。U-15チャンピオンに猛然と向かって来るだろう。東城が間に合ったことが、未来の子供達の心を緩くしたままにしてしまった。トップチームとのトレーニングマッチは、東城を投入しても負けているのに東城が唯一の解決策になってしまった様だ。
中房FCとのクオーターファイナルは激しい戦いが予想された。市井が出場停止、東城は怪我上がりだ。狂った歯車は元に戻るだろうか。
(続く)