毎週水曜日に行われていたトップチームとセカンドチームのトレーニングマッチが久しぶりに行われた。U‐15県チャンピオンであるセカンドチームは九里が浜FCトップチームと微妙な関係になっていた。微妙な関係とは、トップチームから見た場合であって、セカンドチーム、未来の子供達から見たら何も変わっていなかった。
榊野とタ士丸、斎長兄弟(卓志と行人)この4人が加わり、選手層が厚くなった未来の子供達は、より楽しいフットボールができることだけを喜んでいた。九里が浜FCの話をする上では、トップとセカンドという分類が必要なので引き続きこの名称を使うことにする。
トップとセカンドのゲームの話に移ろう。トップチームは、4-4-2のフォーメーションだった。矢野と枝本のツートップ。セカンドチームの3-4-3に対抗して枝本と矢野を縦関係にして中盤を厚くした4-5-1ともいえるもの。セカンドチームは、東城を右FWに置き、センターFWにはタ士丸、左FWに榊野を置いた新FW布陣、中盤は、阿部と西塚を攻撃的MF、中盤アンカーに唐草というMF3枚、DFは右に斎長卓志、左に斎長行人、中央右が海東、左が諸宮、全国選手権に向け4-3-3のフォーメーションを試していた。
未来の子供達は、フォーメーションでフットボールをするわけではないのでゲームが始まったらポジションはなくなるだろう。トップチームのキックオフで始まったゲームは、矢野のドリブルショーで幕が開けた。枝本のタッチしたボールを矢野が持ち出し、詰めて来たタ士丸をかわす、阿部と西塚の寄せも簡単に中央突破する。唐草が進路を塞ぎ、海東もバックアップに入った。矢野は、左サイド方向に唐草と海東を引き出していく。単独ドリブルでここまで未来の子供達を追い詰めるのは矢野ならではだ。ペナルティエリアに迫った矢野は、肩のフェイクを入れると唐草、海東がバランスを崩す。海東は本当に矢野が苦手だった。ナショナルトレセンの年代別代表が相手でも全く苦にしない海東が、矢野の前では子ども扱い?されてしまう。
矢野は、ペナルティエリアに侵入、諸宮の寄せた瞬間左足で持ったボールを右足の後ろを通過させるラボーナの様なパスで真ん中のスペースに送る。枝本が来ていた。矢野に振り回された未来の子供達は、チャンピオンチームのプレーに見えなかった。しかし、明らかにシュートのタイミングで中央に入った枝本だったが、枝本は、枝本だった。左サイドから中央に絞って来た斎長行人が目に入った枝本は、矢野のドリブルに感化されたのか斎長にドリブル勝負を仕掛ける。しかもわざわざシュートレンジから右サイドにずれて斎長に向かった。
斎長行人は、MFを主にする選手だが、器用で1対1もうまい選手だ。枝本は初めてマッチアップする斎長の力量を見極めるようにフェイクを入れながらボールを動かす。間合いを図りながらボールを突き出し抜け出ようとした枝本のプレーを読んでいた選手がいた。一清がボールの行き先に詰めていてキャッチ。チャンスが一瞬で終わる。トップチームのキャプテン、鶴亀が怒鳴っている。だが、トップチームのファーストアタックに冷や冷やだった未来の子供達。矢野のプレーに舌を巻きながらも、目を覚まし戦いのスイッチが入った。
一清がボールを諸宮に渡す。諸宮は、右サイドの斎長卓志につなぐ。ここからは、セカンドチームのワンタッチフットボールが始まる。ボールを持っていることに喜びを感じるのは、矢野や枝本だけではない。セカンドチームの選手たちは、ドリブルも好きだし、ワンタッチパスも大好きだった。ボールプレーをすることが何より好きだ。フットボールにリアクションはありえない。ボールを持ち続けるアクションフットボールが信念だ。相手に主導権を取られたフットボールは、フットボールと言わない。
前半15分ボールを保持したセカンドチームは、いつものように東城の最終突破からタ士丸へのラストパスが通り先制。続く前半30分、ボールを保持し続けた後、西塚から榊野にスルーパスが通り追加点。トップチームは、防戦一方になる中で、矢野への一本でチャンスは作るが、最終ラインに入った諸宮のカバーリング力が矢野の前で躓く海東のカバーとなった。前半終了間際に矢野から枝本に芸術的なパスが出され一清と枝本が1対1になった場面があったが、ここでも枝本は一清を抜こうとしてシュートしなかった。いつまでも枝本は夢見るドリブラーだ。ゲームに勝つことよりもドリブルで抜くことに喜びを覚える選手。相手がどんな選手でもドリブルを仕掛ける。パスは嫌いだ。シュートも好きではない。ドリブルでみんなを驚かせることがフットボールと思っている。結局前半は2-0で終了。
後半、セカンドチームは3-4-3のフォーメーション。宇能が3DFの右、唐草が左、センターに海東。中盤はアンカーに諸宮、左に西塚、右に阿部、トップ下に東城。FWは右に細野、左に市井、センターに中林となった。
いつものメンバーになったセカンドチームは、前半と変わってドリブル中心の攻撃になった。一人抜くとパスの繰り返し。そんなプレーを続けて中林が2点、市井が1点。5-0となったところで、最後まであきらめない矢野がドリブル5人抜き、一清も抜いて1点を返した。
5-1。結果だけ見れば、U-15選手権の結果通りに見えただろう。それでもセカンドチームにとっては、矢野と枝本のドリブルに肝を冷やした。この2人がいるからトップとセカンドのトレーニングマッチが有効なものになる。とはいえ、5-1のゲームは、トップチームのプライドを完全に破壊していた。
九里が浜FCの内部は、微妙さが増していったが、次の週末は千代南FCとのトレーニングマッチが控えている。リアクション系カウンタースタイルの千代南FCとのゲームは、次週に続く