ブラジル代表がコパ・アメリカの予選ラウンドで敗退した。
リオ・オリンピックを優先してコパにネイマールを招集しなかった(出来なかった)こと、自国ワールドカップの悪夢が振り払えずにいることなど原因は幾つか挙げられる。選手のパフォーマンスが低調だったと言う事もある。だが、ここ数年のブラジル代表が良いパフォーマンスを見せたことがあっただろうか。いつからおかしくなっただろう。ロナウジーニョがいなくなった頃からか?もっとずっと前からブラジル代表はおかしくなっていたような気がする。
74年トータルフットボールに打ちのめされた事、82年と86年に黄金のカルテットをもってしてもタイトルを取れなかった事で、美しさや妙技よりも規律や戦術が優先されて、ヨーロッパの真似をする様になった。代表選手はスピードとパワーを優先するタイプばかりになっていった。
これがセレソンなのかと目を疑う力押しだけのチームが、マラドーナの絶妙技1発で撃沈した90年。ロマーリオの能力だけに頼って、どこから来たセレソンなのか思った94年。怪物Rに頼ろうとしたが、セミファイナルまでしか持たず、ファイナルでジダンに木っ端微塵にされた98年。3Rで誤魔化した02年。クアトロマジコにかけようとして幻に終わった06年。キャリアピークをとっくにすぎていたカカに頼るしか無かった10年。そして、ネイマールが抜けたら並以下になって歴史的敗退、マラカナンの惨劇となった自国開催の14年。
マラドーナが世界を変えた80年代以降、ブラジルから世界no.1と言える選手が出ただろうか?ある人は怪物ロナウドを挙げるだろう、ロナウジーニョを挙げる人もいるだろう、ミラン時代のカカを挙げる人もいるかもしれない。皆素晴らしい選手だが、トップかと言うと微妙だ。ロナウドは史上最高レベルのストライカーだろう。だが、フットボーラーとして同時代のジダンと比べてどうだろう。ロナウジーニョは、セレソンの香りがするファンタジスタだ。だが、トップが近づいたところで進むのをやめてしまった。カカは、ミラン時代確かに凄い選手だった。だが、代表では、ほぼ何もしていない。最近はネイマール1人に期待が集まるが、メッシを超えるレベルまで到達するか疑問だ。時間が必要だ。トップに君臨する時間はメッシよりずっと少ないだろう。
この30年間で2回のワールドカップ優勝は、ブラジル代表の衰退を隠してしまった。現ブラジル代表、特にネイマールのいないブラジル代表は、セレソンの輝きを持っていない。虚勢を張った態度で相手を威嚇するだけのチーム。それで相手が怖気づけば容赦無い勝ち方をする。だが、相手が怖気付かなかったら何も出来ず終わる。逆に無様な姿を曝け出す。ネイマールだけが希望になっているからどうにもならない。
底無しの技とアイデアを持っていたセレソンに世界中のフットボーラーは憧れ、夢中になった。セレソンのプレーは、ボールに仕掛けがある様に見えた。CGの無い時代なのに何か合成映像のようなものかと思った。ゲルマン魂もジョンブル魂もカテナチオもセレソンの前では無力だった。もうそんなセレソンは存在しない。カナリア色のユニフォームを着たブラジル代表と言うチームがいるだけだ。そのチームは、フィジカルフットボールとでも言うべき力仕掛けの、力に任せた華のないフットボールを極めようとしている。
世界中のフットボーラーが夢中になったセレソン・ブラジレイロは、夢の中だけのものになってしまった。