ヨーロッパのクラブチャンピオンを決めるチャンピオンズリーグファイナルがミラノのジョゼッペメアッツァであった。
リーグと言う名前がついているが、実際はワールドカップや各大陸で行われるカップ戦と同じ予選ラウンドのみリーグ戦を行い、決勝ラウンドはトーナメントでタイトルを決める。なんちゃってのリーグ戦だ。真のチャンピオンを決めるためにはリーグ戦を続ける方がいいに決まっているが、今でさえ増え続けるゲーム数によって、選手は既に限界に達している。興行主達は増やしたいだろうが、選手が疲弊してゲームそのものがレベルの低い荒れたものになる。
ミラノでのファイナルも疲弊した選手がタイトルを獲る為に攣った脚をひきずり戦った。痛々しいシーンばかりが目につき、ヨーロッパの最強クラブを決める大会のファイナルとしては、お粗末な内容になっていた。実況が消耗戦という言葉を連呼するゲームを見ているとフットボールの未来が不安になった。かつてハイスクールフットボーラーだった頃、脚が攣ったらゲームに出して貰えなかった。脚が攣った後の練習は怖いものだった。世界最高の選手達がボロボロになるほどのシーズン末期だから理解はできるが、お金を貰ってプレーを見せるプロとしては如何なものか。お金をとれる内容では無かった。だが、世界最高の選手達はそんなになっても興行上ゲームに出なくてはいけないので同情はするが。
このファイナルは今シーズン国内リーグで2位と3位チームの戦いで「ダービー」だった。国内リーグ優勝チームは既に敗退していた。リアクション同士の戦いにありがちな延長戦120分ドロー、PK戦決着。世界最高のクラブタイトルは決まり方にのみドラマがあった。優勝チームをご贔屓にする関係者は喜んだだろう。言葉にしたら失礼になるかもしれない「何か」が繋がったはずだ。
チャンピオンズリーグになって20年が経った。チャンピオンズカップと呼ばれていた頃は、各国リーグチャンピオンだけに出場権が与えられていたが、強豪国のビッグクラブに出場権を振り分けた結果、強豪国ならば国内リーグ前年度4位でもヨーロッパチャンピオンに成れるチャンスが生まれた。このタイトルはリーグと称して以降、連覇したチームはない。もう1つのなんちゃってヨーロッパチャンピオンを決めるELという大会。これもまたリーグという名のカップ戦だが、こちらは連覇するチームが度々ある。国内リーグ7位に沈んだチームがEL3連覇の偉業を達成して成功したシーズンと言われている。
チャンピオンズリーグとユーロリーグのヨーロッパクラブタイトルは3年連続でイベリア半島の国が独占した。他の国は猛省して立て直さなければならない事態だ。カップと呼ばれていた時代の様なジャイアントキリングは起きにくくなった。長靴の形をした国の聚落が一国独占に繋がった。フットボールの母国にあるビッグクラブがどれも駄目になった。フットボールの母国のビッグクラブは国内リーグもグダグダで、お金にモノを言わせるチームのマネタリーフットボールが機能しなかった。母国の国内リーグでは設立から132年かかったチャンピオンが生まれた。これはクラブの格で言えば、ジャイアントキリングだが、優勝に132年かかったチームはビッグクラブと堂々渡り合い、2桁勝ち点差にしたのは格上チームの様だった。ビッグクラブが揃って自壊してしまったことが最大の原因ではあるが・・・。
チャンピオンズリーグの一国独占状態は、この10年でもさほど変わっていない。カタルーニャが4回、イスパニアは2回、母国が2回、ゲルマン魂の国と長靴の形をした国がそれぞれ1回だ。カタルーニャとイスパニアは足して1カ国カウントだから、6回、2回、1回、1回となる。しかも直近3年は連覇だ。
チャンピオンズカップの時代、白い巨人のチームは5連覇を達成した。ゲルマン魂の自国リーグ内1強チームも3連覇がある。現代フットボールの祖と言えるトータルフットボールのチームは、魂の国よりも早く3連覇した。2連覇ならばまだいくつもある。だが、リーグという名を冠したら、20年以上連覇するチームが出なくなった。ビッグクラブの持ち回りタイトルになって、更に直近はイベリア半島から出なくなったCLタイトル。チームの連覇はなくなったが、1つの国が独占する状態になってしまった。トータルフットボールのチームが3連覇したのは革命的なスタイルによるものだった。今のイベリア半島3連覇はお金の力の絶対優位性が生んだものだ。しかしイベリア半島の国のフットボールスタイルはトータルフットボールをその源流に持ち、攻撃と技術を重視する。この点は、他の国よりも優れている。トータルフットボールの遺産分だけ優位性を持っている。
リーグという名のカップ戦は、スポンサーとメディアに持ち上げられ、膨張し過ぎた様だ。ヨーロッパチャンピオンでありながら、実質世界チャンピオンとなったタイトルは、獲ったチームも、獲った選手もその後のモチベーションを低下させるという副作用をもたらした。入るお金と名誉が桁外れになり、フットボールがスーパーのつくビッグビジネス化した現代では、純粋なフットボールの戦いは激減した。お金と利権、そして政治的競争がタイトルに結びついてしまった。フットボールが芸術から商売に変わった現代、リーグと言う名のカップ戦UEFAチャンピオンズリーグは、ビジネスフットボールのチャンピオンを決めるカップ戦になってしまった。
リーグと言う名のカップ戦の未来は光り輝くモノになるだろうか?巨大化し過ぎたものは臨界に達して消滅する。巨大化し過ぎたタイトルが、崩壊しないことを願っている。