セレソン、ドイツ、オランダ、アルゼンチン。フットボール大国がセミファイナルに進んだ。オランダとスペインが入れ替わると予想通りの組合せだ。
今回ワールドカップ最大のサプライズはスペインの敗退だった。ヨーロッパ、そして前回ワールドカップを制し、世界を席巻したポゼッションフットボールが今回のワールドカップでは通用しなかった。そして今回のワールドカップでは美しいフットボールを見ることが出来なかった。なぜなら、ほとんどのチームが、リアクションフットボールを基本戦術としたからだ。全てのチームがイタリアに見えた。いや、イタリアだけが美しいフットボールを求めて勝つことが出来なかった。イタリアは、美しさを求めたら強さとしたたかさを失った。
今回のワールドカップは、フットボールを勝敗を決める競技として見れば、とてもスリリングな内容だ。予選リーグは得点シーンが多く見られ、番狂わせが見られた。決勝トーナメントは、延長戦がここまで6試合、その内PK戦が3試合もあった。コンペとしてはとても面白い。でも何かが足りない。美しいフットボールが見られないからだ。ワールドカップに美しいフットボールを期待するのは、無理かもしれない。美しいスタイルや最新の戦術は、ビッグクラブを中心としたチャンピオンズリーグが最高の舞台となったからだ。ワールドカップは負けない戦術を追求する場となってしまった。大国も小国もみな同じ戦術になってしまった。フットボールの神様も美しいフットボールをワールドカップに求めなくなったのかもしれない。チャンピオンズリーグがあるから。代表の戦いは勝ち負けを最優先にすべきだからかもしれない。
セレソンのフットボールは、芸術性、意外性、マジカルが本当の姿のはずだ。でも今回のセレソンは、イングランドの激しさとイタリアのリアクションを混ぜたようなチームになってしまった。マリーシアもなくなってしまった。本当に南米のチームなのか。オランダのフットボールは、ずっと世界最高の美しさがあった。セレソンもオランダの美しさにはずっと勝てなかった。そして今回も美しいはずだった。ワールドカップ予選まではそう見えた。今年は、トータルフットボールが世に出て40周年、オランダはトータルフットボールを捨てた。今年のオランダは、渦巻きでもクロックワークオレンジでもない、イタリアのコピーだ。ドイツは、スペインのコピーだったが、ドイツらしい適応力を進めたら、いつの間にか元のドイツに戻った。このドイツは強い。イタリア以外には負けたことがないドイツだ。アルゼンチンは、いつものアルゼンチンだ。強そうに見えない。したたかだが、むらがある平凡なチームだ。でもそれがアルゼンチンだ。一発芸はセレソン以上だが、続けられないのがアルゼンチンだ。そしてアルゼンチンには、神の子がいる。(噛みの子ではない。それはウルグアイだ)神の子次第で決まるのがアルゼンチンだ。
セミファイナルはそんなチームが対決する。美しいフットボールは期待できないが、大国の意地の戦いは見られる。4-3のゲームを見たい。4-0や0-0のPK戦はいらない。美しくなくてもスペクタクルなフットボールは出来るはずだ。