ペップがその機能性を極限まで高めたポゼッションスタイル。史上最強のバルセロナとともに世界のサッカーを席巻したのは5年前のこと。
5年前、ペップが完成させたポゼッションスタイルは、戦術的な機能性によるものだったのだろうか。それともメッシ、シャビ、イニエスタ、ブスケスという稀代のクラックによるものだろうか。
シャビとイニエスタの衰え、ブスケスの勤続疲労という状況により、メッシという異次元の怪物が大きくなりすぎて、その依存度が高まっていく。そしてポゼッションの機能性は低下していった。ボールを持ち続けることが、ゴールされないことという守備的な発想が強くなり、いつも間にかポゼッションは、守備戦術になっていったバルサ。攻撃はメッシ、守備は、ポゼッションというスタイルに陥り、消極的なパス回しを狙われ、カウンターで失点するというパターンを作ってしまった。ポゼッションに対するリアクションという構図を作った原因になった。
ポゼッションフットボールの根底にあるのは「クライフイズム」や「アヤックススタイル」を世に知らしめた90年代のバルサドリームチームだが、ドリームチームもCL決勝でカウンター型ミランにやられている。ポゼッションスタイルの機能美の先には常にカウンタースタイルがやって来る。今は、マドリスタイル(白い方も赤白も含む)という究極の腕力型カウンタースタイルが時代の流れになってしまった。
ペップバルサが、それまで尖った前衛的な戦術であったポゼッションスタイルを一般戦術化した時の選手は、殆どがカンテラーノであり、クライフイズムがバルサイズムに変わってからの選手だった。メッシという史上最高の怪物が進化と覚醒を繰り返し、バルサ=ポゼッションから、バルサ=メッシという式にしてしまい、いつの間にかバルサ=カウンターに変わってしまった。MSNという並びもそんな背景から生まれたものだろう。
ポゼッションスタイルは、戦術の機能美という幻想を生み出したが、幻想に過ぎなかった。ポゼッションは戦術的な機能美を生み出す要素であるが全てではない。戦術の機能美には、常にコンダクター型の中盤選手がいる。シャビとイニエスタ無くして戦術美を持ったポゼッションは生まれなかっただろう。偽9番というポジションに入ったメッシは中盤的な機能の一部だった。ブスケスの視野によるボールチラシもその一部だった。ペップが完成させたはずのポゼッションスタイルの機能美はもう存在しない。今から思えば、幻想は一瞬だった。
いつまで続くかわからないカウンタースタイル全盛期。フットボールが生まれた時から続くカウンターアタックは、無くなることは無いだろう。ポゼッションスタイルは、アヤックスの時代から数えても50年。カウンタースタイルの半分にもならない。機能美=テクニックの融合という図式によって新しいスタイルが生まれる日も遠いことではないだろう。
その時には、MSNもBBCもいない世界になっているのだろう。