今年のバロンドール候補が、ロナウド、メッシ、ノイヤーの3人に絞られた。世界のレジェンド達がそれぞれの好みやおこぼれ頂戴的な発言が目立ってきた。(政治的な香りとメディアに言わさてるような胡散臭さがある)自分も3回バロンドールを取ったUEFAの会長が、「バロンドールはドイツから出るべきだ」と言ったら、スペインの「金にモノを言わせるクラブ」からクレームが入った。今年はロナウドが取るべきであるという、一種の自薦による強力なバックアップだ。バルサが10人出したのに対して7人ということが許せない気持ちも働いているだろう。バロンドールは金にモノ言わせても取れないか?
今年はロナウドで決まりのように思える。メッシとノイヤーは何かが足りないような気がする。バロンドールは、世界中のサッカー専門家が今年一番活躍したと思う選手を選ぶ印象評価の人気投票であって本当の世界最高選手を選ぶものではない。ポジションの違いもあるので世界最高のサッカー選手は選び難い。ベースボールで言うところのMVPと同じレベルと思えば納得する。陸上の世界記録とシーズン最高記録の関係にも似ている。今年のロナウドは印象に残っている。キャリアのピークであろう。ノイヤーもCLを除けばすばらしかった。GKが試合を決める活躍をした。メッシは史上最高の選手と言う期待には応えていない。メッシのハードルが一番高いからそれを超えなければ印象が薄くなる。偏差値75の人が偏差値73になったのと偏差値68の人が偏差値72になったのを比べているのが今年。今年のMVPはロナウドであっても史上最高とか歴史上の最高選手を選ぶとすればメッシになる。同じように同時代の選手だったペレとエウゼビオ(1965年のバロンドール)を比べてどっちが史上最高かと言えば、ペレになるようなもの。エウゼビオもレジェンドであるが、ペレより上になることはない。ロナウド本人がフェラーリとポルシェを比べるようなものといっていたが、そうではない。市販の最高級チューンアップカーとF1マシンを比べるくらいの違いはある。
バロンドールは今年のMVPを選ぶものとすれば静かに選んでもらえばいい。メディアが世界最高選手という肩書きをつけることが間違っていると思ったほうが良い。メッシが一度超えたハードルを今年超えた選手はいなかった。メッシが超えたハードルを超えない限りメッシが世界最高の選手であることに変わりは無い。
おまけの話:伝説のGK(伝説のフットボーラーのラスト)
45年前、飛んでくる殆どのシュートを止め、PKは全てセーブするという信じられないGKがいた。身長は1m70㎝を少し超えた位だったが、反応速度とジャンプ力は並外れていた。セーブする姿は宙に浮いているようで、まさに空飛ぶGK–フライングGKだった。打たれたシュートがゴールネットを揺らすことはなかった。たった一つの弱点を突かれるまでは。CK時に1m90㎝はある選手に囲まれ、ジャンプ出来なくなる時があった。空を飛べない瞬間に打たれたシュートは止められなかった。CKからの失点だけが目立つようになった。そして身長が低いことが弱点と見られるようなった。失点は誰より少なかったのに、シュート阻止率は誰より高かったのに、そしてPKは決められたことが無かったのに体の大きさ、身長だけが強調されてしまった。世界でも例のないスーパーなGKだった。のちのカンポスが普通に見えるような力を持っていた。失点が無いチームは負けなかった。PK合戦が3対0や2対0という記録が残っている。目を疑いたくなるような話だ。「事実は小節よりも奇なり」スーパーGKの出現によってたった1人のGKがゲームを決めることが出来ると実証された。でもスーパーGKは静かに歴史から消えていった。スーパーGKを超える伝説のGKが誕生したからだ。伝説のGKは、スーパーGKが5年かけて到達したレベルにたった1年で到達した。しかも体格的な弱点は無かった。予測能力、反応速度、キャッチング、フィード、ボールスローといったGKの必要なスキルはスーパーGKのそれを超えていた。伝説のチームはDFがハイラインをとり、裏のスペースは広大だったが、伝説のGKは自陣の大部分をカバーした。1対1に絶対の自信があった伝説のGKは相手FWが抜け出し1対1になっても得点を許すことが無かった。今のドイツ代表GKノイヤーのプレーが当たり前だった。PKは反応速度によってヤマを張って飛ばなくても止めていた。何よりキャッチングがずば抜けていた。片手でボールをキャッチするプレーは目を疑ったものだ。何しろ手がデカかった。手に合うキーパーグローブは東の国に売ってなかった。だからいつもイボイボのすべり止めが付いた作業用の軍手を使っていた。これなら伸びるからと言っていたが、すぐに切れていた。野球のグローブのような手でするワンハンドキャッチは今でも真似出来るGKはいないだろう。伝説のGKがパンチングやフィスティングするのを見たことが無い。いつもキャッチしていたからだ。相手の枠内シュートは確実にマイボールになった。GKのキャッチがポゼッションの始まり、攻撃の始まりとなった。そんなアニメやゲームの中でしか見られないような伝説のGKは実在した。でも歴史に名を刻むことはなかった。メジャーデビュー直前に大怪我を負ってしまったからだ。怪我に負けたと言えばそうかもしれない。怪我のシーンは、思い出すだけでゾッとする。今の判定ならば、その選手は当然一発レッド、サッカー界追放となるような悪質なものだった。長期のチーム離脱となった伝説のGKはプレーする意欲を失っていった。あまりに早くたった1年で頂上に到達したことで我慢とか待つという気持ちを失くしてしまったかもしれない。才能は桁外れの選手ばかりだった伝説のチームの中でも更に上に君臨した伝説のGK。歴史に残ったのは、僅かに伝説のチームのスコアブックに書かれたものだけだ。伝説のGKがいなくなったチームは失点が止まらなかった。守備の戦術はGK。戦術はマラドーナのGK版だ。伝説のチームが実践した「攻撃は最大の防御」は伝説のGKが自陣に君臨して成立した。伝説のGKが不在となっては無謀なノーガード戦法になっていた。伝説のチームは伝説のGKとともに歴史に名を残すことなく消滅してしまった。時代を超えて輝き続けるはずだったチームは一部の人だけが記憶するチームになった。オランイェ74やセレソン82を超える可能性があった伝説のチーム。その頂上に君臨していた伝説のGKを超えるGKはまだ生まれていない。伝説のGKの前に伝説のGK無。伝説のGKの後に伝説のGK無。伝説のGKはバロンドールを取っていたかもしれない。