バルサが世界の最先端をいくポゼッションサッカーで世界をリードしていたのは３年前のことだ。

バルサのスタイルは、攻撃サッカーの世界基準として多くの国に広まり、パスサッカー＝ポゼッションサッカー＝美しいサッカー＝バルサスタイルという構図になった。バルサのパスサッカーは、アヤックスのスタイルを源流とするものだが、戦術が進化した現代サッカーにおいてスペースが最小化されたスモールフィールドＤＦを攻略する最高の戦術となっていた。スタイルの基本は、ダイレクトプレーとワイドレンジだ。しかし、よく見るとそのスタイルを実現するために絶対に欠かせない選手達がいた。シャビ、イニエスタ、ブスケス、そしてメッシだ。ペップ・グアルディオラによって完成形となったバルサスタイルは、ＭＦの３人と偽９番と言われたメッシがいたから可能になったスタイルだった。４人全員がバルサのカンテラ出身。バルサに入団したときからロンドを基本練習としてパスサッカーを極めてきた選手達だ。バルサスタイルの絶頂期から３年が過ぎ、バルササイクルの終焉と言われ、昨シーズンは無冠に終わったバルサ。シャビとイニエスタのピークが過ぎ、ブスケスのプレーが想定内になり、メッシがベストフォームでなくなったように見える。バルサ対策と言われるペナルティボックス前を８人の２ラインで守るスタイルを突破するアイデアがなかったのも原因のひとつだが、バルサスタイルを支えた４人のパフォーマンスが低下したことが最大の原因だろう。バルサのスタイルが終わったのではなく、選手のピークパフォーマンスが共鳴した時期が過ぎ、新しい選手の共鳴が必要になったのだ。ある選手のサイクルは終わってしまったかもしれないが、それをバルサの終焉と言うのは正確ではない。

昨シーズン、ネイマールという新しいピースが加えられたが、怪我とＷ杯準備意識によって完全には機能しなかった。そして、１４‐１５シーズン、スアレスというピースが加わった。バルサスタイルが変わろうとしているようにも見える。本来のパスで崩すスタイルから個の力でゴールを抉じ開けるスタイルになるのかもしれない。マドリのような強いが、美しさに欠けるスタイルだ。しかし、スアレスの復帰する１０月末まで実体は見えてこない。ポゼッションを基本としたパスで崩すサッカーと個の力でゴールを抉じ開けるサッカーを両立させることが、ルイス・エンリケの進む道かもしれない。今のペップ・バイエルンは、ポゼッションスタイルながらジャーマン・プレッシング（ゲーゲン・プレッシングが源流）によるカウンターとロッペン、リベリの力で抉じ開けるスタイルを持っている。バルサのスタイルも進化しなければ生き残れなくなるかもしれない。少なくとも世界のトップでいることはない。シャビ、イニエスタ、ブスケス、メッシの支えたスタイルが、世界最先端だった時代は過ぎてしまった。美しく勝利するクライフイズムを捨てて欲しくはないが、美しいだけのチームではバルサではない。強さを秘めた美しいバルサであって欲しい。

シーズン開幕から１ヶ月、バルサは、公式戦で負けていない。失点もしていない。しかし、美しさに欠けている。そして、メッシが進化？退化？変化しているように見える。プリメーラデビューから１０年が経ち、クラブタイトルは全て獲り、バロンドールも４度獲ってしまったメッシは、２年前までのメッシと別次元に向かおうとしているように見える。２年前までのメッシは、ポゼッションスタイルのフィニッシャーだった。世界最高のフィニッシャーだった。ボールは最後にメッシを通過してゴールに吸い込まれていた。そんなメッシのプレーに変化が見え始めた。世界最高のフィニッシャーから世界最高のフィニッシュメーカーになろうとしているようだ。ネイマールとスアレスと言う世界最高レベルのストライカーのゴールを演出するプレーメーカーと言ってもいい。９．５番のアタッカーから１０番のプレーメーカーへ。それが、メッシにとって進化となるのか、退化となるのかは、まだ分からない。スアレスが復帰する「クラシコ」で答えが見えてくるかもしれない。

ゴールするメッシとアシストするメッシ本当のメッシは？

蛇足：現代サッカーにおいて最高の選手と言われるメッシとロナウド。美しい流れの中でゴールを量産するメッシと個の力でゴールを抉じ開けるロナウド。どちらも世界最高レベルにあって甲乙付けがたい。どちらが好きかの違いだけだろう。メッシがいなければロナウドが世界最高の選手でバロンドールも６回獲っていたかもしれない。レバタラだが。ロナウドがいてもメッシは４回バロンドールを獲った。しかも去年のバロンドール（発表は今年）も本当はメッシだったようだ。投票が締め切られたときの１位はメッシだった（噂）ので、ＦＩＦＡのプラッターもメッシが好きだと口を滑らせた。そしたらレアルとロナウドからクレームがつけられ、メッシは怪我をしていたし、さすがに５回連続はまずいと思ったのか、バロンドールの投票が延長された。結果は知ってのとおりでした。人気はメッシが上かな？正義のメッシと悪のロナウド。メディア上は、そんなコピーが似合う２人です。