現代サッカー(フットボールとせず日本語に訳す)を代表する3人の監督(コーチとせず日本で馴染んだ監督と訳す)
クライフイズムを昇華させたペップイズムで美しさと厳格さと強さを備えたチームを生み出し続けるペップ。リアクションサッカーというマイナスイメージの戦術を機能美と言える現代の最先端戦術として勝利とタイトル獲得し続けるモウリーニョ。昔(とは言っても2003年のこと)プレミアLで無敗優勝と言う奇跡の結果を出したインビンシブルズを生み出したベンゲル。3人の目指すサッカーはスタイルが違えど「美しさ」という言葉がキーになっている。全てクライフイズムが別の進化を遂げたもののように思える。
ペップのスタイルは、クライフ原理主義だ。「美しく・勝つ」美しさと勝つが同列にあるものだ。美しさを追い続ける、勝利も掴み続ける、だから10年に満たない監督生活で20ものタイトルを獲った。美の追求、勝利の追求に命をかけている。サッカーにかけるペップの個性、我の強さは飛び抜けている。そんなペップもメッシは別格のようだが。(バイエルンの選手達に「俺の言うことを聞かなくていいのはメッシだけだ」と言っていた)ペップが目指すサッカーは、ワールドクラスの選手達しか出来ないものだ。サッカーの技術が最高レベルにあってサッカーの理解も最高レベルにないと実現しない。イレギュラーを起こさせないイレギュラーをコントロールするサッカーだから。
モウリーニョのスタイルは、勝利至上主義と言われアンチクライフイズムと呼ばれるが、「勝利とは美しい」ということを極め続けた結果、今のスタイルになった。ポゼッションサッカーが美しいのではなく美しいゴールが美しいサッカーであっ、てそのために隙を作らない機能的なスタイルと隙を見逃さない凄みのあるスタイルになった。目の前の相手に勝つ戦術家としてのモウリーニョは世界最高、「スペシャル1」だ。ゴールシーン以外は、玄人にしか受けないことが玉に瑕。
そしてベンゲルのスタイルは、クライフイズムの通常進化だ。美しさを求め続けた理想主義的サッカー。バルセロナよりも美しいパスサッカー。ハイベリーで生まれたインビンシブルズは、ペップの造った史上最高のチームバルセロナよりも美しくパスが繋がり、フィニッシャーのベルカンプやアンリが芸術的なゴールを決めていた。たった1年のことだったが史上最高のチームはインビンシブルズかもしれない。タイトルはプレミアLだけだったかもしれない。美しさや芸術性の評価点をつけたら個のチームを超えるチームは無い。そんなチームを造ってしまったベンゲルだから夢を追い続ける監督のように見えてしまう。勝利やタイトルを追い求めていない訳ではない。美しいサッカーを求めすぎた結果、今のガナーズが出来上がってしまった。それでもベンゲルの造ったこんな(こんなと言ったら失礼か?)美しくも儚いガナーズにタイトルを獲って欲しいものだ。