9月1日、夏の移籍市場が締め切られたが、今年も驚きの移籍があった。
一番の驚きは、ユナイテッドのパニック補強というか、万歳補強というか、戦略性、戦術的見地の欠如した、将来性無視の補強だろう。ファンハールは老いてしまった。セントラルMFの補強(エレラ)は分かる。ディ・マリアの補強は分かる(ディ・マリアは世界最高レベルの選手だ。バロンドールを獲ってもおかしくない)香川の放出も分かる。結構分かるからサプライズではないか?いやここからだ。チチャリートとウェルベックを放出、ファルカオを獲得。ウェルベックは、ユナイテッドの下部組織、アカデミーから上がった生え抜きの選手。スペインの白いシャツのチームのような金にモノを言わせてビッグネームを集める手法だ。生え抜きの選手を大事にしないのも白いシャツのチームと全く同じだ。ユベントスにアカデミー出身のポグバを放出したのは一昨年だったか、そのポグバはユベントスでブレークした。ファンハールは、アヤックスの育成システムの恩恵を受けたはずだ。また、香川については、ドルトムントから22億で買って、11億で売ると言う信じられないビジネスセンスだ。(香川がフィットしなかったのも原因だが)サウサンプトンからルーク・ショー、アヤックスからダレイ・ブリント、スポルティングからロホを獲った。三人とも左利きで本職は左のサイドバックだ(ブリントはセントラルもできる算段か)。本来必要なセンターバックは補強しなかった。オランダ代表で3バックが当ってしまったファンハールは、イングランドに行って混乱している。センターバックが弱かったオランダ代表と同じように考え3バック(守備時は5バック)にしたはずだが、センターを3人必要とする3バックなのにセンターバックの補強は考えず(考えても候補がいなかった?センターバックは世界的に品薄か?)攻撃の選手、名前の通った選手の補強に走った。ユナイテッドは、しばらく時間が必要な感じだ。サー・アレックスの偉業のあとは誰がやっても厳しい。ユナイテッドの監督は、暫くの間サー・アレックスの影と戦わなければならないはずだ。オールド・トラッフォードは、シアター・オブ・ドリームス(夢の劇場)と呼ばれるが、今シーズンがサポーターにとって「悪夢の劇場」とか「白昼夢の劇場」にならないことを祈る。
次の驚きというか、いや失望と言ったほうが正しい表現となるのはバルサとバイエルンの補強だ。バルサは、サイクルの終焉と言われているが、サイクルの終焉ではなくバルサイズムの破壊行為とも言うべき補強を行った。去年ネイマールを獲ったときもメッシとの共存を疑問として不要な補強と言った。今年はスアレスを獲った。メッシ、ネイマール、スアレスという南米を代表するFW3人をトップに並べる布陣だ。バルサイズムは美しいパスサッカーが基盤としてあり、カンテライズムがチーム編成の基本にあったはずだ。白いシャツのチームつくりに追随する補強だ。バルサがバルサイズムを捨てた補強と言わざる得ない。
次にペップのバイエルンだ。バイエルンいやペップは、クロースを放出し、何を血迷ったかシャビ・アロンソを獲った。これからピークを迎える選手、しかもユース時代からバイエルンに所属する生え抜きの選手で現時点では世界最高のセントラルMFを放出してしまった。カンテライズムも忘れたが、選手を見る眼も曇ってしまったのか?シャビ・アロンソは、すばらしい選手だが、選手生活は晩年にさしかかりもう長くはない。白いシャツのチームが喜ぶだけの行動だ。ペップにはスペイン人を補強したがる傾向があるようだ。ファンハール時代にバルサがオランダ化して混乱したようにならなければ良いが。ペップがペップらしい美しいサッカーの伝道師であること願っている。
今年の夏の移籍市場における驚きというのはこんなところか。スペインの白いシャツのチームはいつもながらの補強だ。去年エジルを放出したのは驚いたが、ディ・マリアが完全にカバーするパフォーマンスを見せた。今年はそのディ・マリアを放出し、J・ロドリゲスを獲った。ある意味、二匹目のドジョウだな。トニ・クロースを獲ってあるのでリスク減らしはできていたか。らしい補強行動だ。ロナウドを放出する時期が近づいたか?また、ベンゲルがいつもと違う早い動きと気前のいいお金を使った。但し、アレクシスはそのお金に見合う選手に見える。リーグ戦開幕早々の3ゲームは、まだまだフィットに時間がかかるように見えたが、時間が解決してくれるのを待つしかないだろう。イタリアに触れてないが、イタリアは金がない。プレミアやリーガ、ブンデスに移籍で競争するのは今のところ不可能だ。これもサッカーの神様から受けている罰のひとつかもしれない。