1982年、サッカーがまだファンタジスタに支配されていた頃。現代にタイムスリップしてもその美しさは、バルセロナにもバイエルンにも負けないチームがあった。黄金のカルテットと呼ばれる4人が中盤を支配し、攻撃を組み立てたブラジル代表とシャンパンフットボールと呼ばれ、四銃士と呼ばれた4人のMFがピッチに君臨したフランス代表のことだ。
黄金のカルテットを擁するチームは、ブラジル代表史上最も美しいサッカーを見せ、今でも70年ワールドカップのブラジル代表を凌ぐブラジル代表といわれる。黄金のカルテットは、ジーコ、ソクラテス、ファルカン、トニーニョ・セレゾという4人のファンタジスタを並べた中盤で華麗なボールテクニックとイマジネーションあふれるプレーによってこの時代最高の破壊力を誇った中盤だ。10年位前の日本でも中田、中村、小野、稲本を並べた中盤は、黄金の4人と言われたが、この時の監督がジーコというのも何かの因縁?これは日本のメディアが言ったものなのでただの話題づくりの一環だと思って間違いない。
黄金のカルテットは最高の美しさを持ちながらワールドカップは結果が出なかった。82年も次の86年も。美しいサッカーは勝てないという代表的なチームとして一番に挙げられるようになってしまった。ロッシを擁するイタリアの前に屈した。カテナチオを圧倒する内容を見せていたが、ちょっとしたミスから失点。ロッシ、コンティ、アントニオーニのイタリア攻撃陣も強烈に上手く強かった。82年大会の優勝チームがイタリアだ。
プラティニ、ジレス、ティガナ、ジャンジーニ(86年はフェルナンデスだったかな)の四銃士も黄金のカルテットに負けない美しさを持った中盤だった。(ゲームでは勝った:86年大会)4‐4‐2のダイヤモンド型に並ぶ中盤で、ジレスとティガナの上手さとプラティニのイマジネーションによって華麗なパスサッカーが展開された。でもワールドカップでは結果が出なかった。82年、86年共に準決勝で、西ドイツに屈した。世界最先端のサッカーをする今のドイツではなく、ゲルマン魂のフィジカルフットボールをする西ドイツに。(今でもフランスはドイツが苦手だ)美しいサッカーでは勝てないことがここでも立証されてしまった。
黄金のカルテットも四銃士のシャンパンフットボールもワールドカップでは結果が出なかった。記録には残らなかったが、記憶に残った。そして機械仕掛けのオレンジと同じように伝説になった。ワールドカップを取らなかったのにその美しさが伝説として語り継がれるチームとなった。
クアトロマジコを憶えていますか?最初はファンタスティック4と呼ばれていた2006年ドイツ大会のブラジル代表のことです。ロナウジーニョ、ロビーニョ、カカ、アドリアーノ(確か)の4人を指します。でもクアトロマジコは前評判だけの評判倒れ、期待はずれに終わりました。フランスにあっさり負けました。ヴィエラとマケレレの中盤の底は固く何もできずに終わった感ですね。代表監督パレイラは94年大会で優勝したのに「つまらないサッカーだ」と批判されたために82年大会の黄金のカルテットに肖りクアトロマジコを作りました。しかし、時代が代わっていました。代表チームが美しいサッカーをする時代ではなかったですね。元々ブラジル代表は、美しく見える個はありましたが、美しいサッカーをしたのは黄金のカルテットだけでした。美しい個の伝統はありますが、美しいサッカーをしようとして本来の目的を達成しない伝統があるのがブラジルです。
クアトロファンタティスコとは、メッシ、アグエロ、イグアイン、ディマリアの4人を指した2014年ワールドカップのアルゼンチンです。この4人は、ユース年代から代表の攻撃陣として編成され、U20ワールドカップ、U23(オリンピック)を優勝し、フル代表でも優勝すれば史上初の快挙でしたが、優勝できませんでした。本大会で4人がピッチに揃ってプレーすることが希でした。アグエロは大会前から怪我をしていました。ディマリアも怪我をしてしまいました。決勝にディマリアがいれば結果は違ったかもしれないという悔いを残しましたが、このクアトロファンタティスコという表現は、メディア発のもので過去の黄金のカルテットや四銃士を真似ていわれたものですね。アルゼンチンは、ブラジルと同じように輝く個はいても美しいサッカーはしません。美しいサッカーを求めてもいないと思います。本当は4人もいらないのです。「戦術はXX」あとは全員で守る、1対1で負けない守備が伝統です。メッシの不調が「謎」として残った大会でしたが、期待の大きさに耐えることができなかったことと思います?メッシの話は長くなるのでまたの機会にしましょう。
クアトロマジコとクアトロファンタティスコは記録にも記憶にも残らない結果でしたが、結局、4人のクラック(スーパープレーヤー)で構成された攻撃陣は結果が出ないのがワールドカップの歴史になっています。ファンタジスタ4人が、黄金のカルテット、四銃士として中盤に君臨していたころからワールドカップは守備力が決め手でした。4人も攻撃ばかりの選手がいたら守備陣はきついからですね。それでも黄金のカルテットや四銃士が躍動したサッカーへの憧れは今でも根強く残っています。クラブではなく代表でやる凄さも含めて。