バルサの育成が生んだ世界最高のフットボーラー。カンテラの最高傑作アンドレス・イニエスタ。本当に育成が生み出したのかは疑問だが、クライフの創造したバルサのDNAとマシアの魂を持った選手であることは疑う余地が無い。
イニエスタの眼に映る光景とはどんなものだろう。スローモーションのように見える相手ディフェンダー。平面上は見えないはずの複数の味方を補足する3次元の映像かもしれない。並みの一流選手には到底見えることのない絵が見えているはずだ。そして難易度の高いプレーを選択するイマジネーション満点の遊び心はフットボールを異次元のエンターテイメントにしてくれる。ドリブルの巧さ、ボールコントロールの巧さは元より、ピッチに流れる時間をコントロールするプレーができるのはイニエスタだけだ。
ロナウドのようなフィジカルとスピードがあるわけではない。ネイマールの魔法のような技と即興性があるわけでもない。メッシのような理解不能と言える異次元プレーをするわけでもない。だが、イニエスタは、ボールをロストしない。いやボールがイニエスタから離れない。シンプルな動きを組合せるだけで密集をすり抜けていく。メッシですら出来ないことをイニエスタはやってしまう。
近年、怪我で出番が減ってきているが、それでもイニエスタの領域に到達する選手はいない。ペップが恐れ、シャビが未来を託したイニエスタはバルサのカンテラで生まれ、マシアの誇りとなりカンプノウの伝説となった。
カンプノウに響く、「イニエースタ、イニエースタ、イニエースタ」のコールはレオメッシのコールを遥かに超えている。カンプノウに住むフットボールの神様は、イニエスタを心の底から愛している。メッシより、ジダンより普通にイニエスタが好き。ペレよりマラドーナより普通にイニエスタが好き。
メッシがいなくてもバルサは生き続ける。イニエスタのいないバルサはバルサではなくなる。天から見ているクライフもイニエスタをいつまでも見たいはずだ。