ワールドカップは質の高いフットボールが見られなかった。予想通りの結果で驚くことではなかった。
フットボールの戦術はアンチフットボールに向かっているようだ。リアクションフットボールが勝つための戦術として進化したかのように見えてしまったからだ。バルセロナやバイエルン、アーセナルなどが熟成させてきたポゼッションスタイルがどうも分が悪くなってきた。ポゼッションフットボールの対処法としてリアクションフットボールが機能しているように見えるからだ。確かにボールを保持しているときにリスクをとって前懸かりになるとカウンターを受けやすくなる。一瞬の隙が失点に繋がる場面が出てくる。
チャンピオンズリーグのバイエルン対Rマドリを見るとそのシーンが多く見られ、戦術としてポゼッションフットボールが敗北したと見られてしまった。Rマドリの超高速カウンターは破壊力満点でバイエルンは小さなミスを犯すという隙を見せたためにその餌食になってしまった。そしてポゼッションフットボールが敗北したと言われ始めた。バルサ対Aマドリはその典型だった。しかし、バルサはポゼッションスタイルを曲げ始めていた。メッシに頼りすぎたスタイルはまだ良かったがネイマールを加え、ポゼッションよりも個人の突破を重視するスタイルに変わりつつあった。中盤でボールは保持するものの最後はメッシに渡す、ネイマールに渡すという攻撃になった。ポゼッションスタイルのフィニッシャーとしてメッシは最高の選手だがネイマールはまだカウンタースタイルのアタッカーだ。ポゼッションの中で機能するには時間が必要だった。それでもバルサとAマドリの決定的なシーンはバルサが上だった。GKの差もあったが勝負はAマドリだった。フットボールで勝って勝負に負けた典型ともいえる。それもフットボールだ。ポゼッションが敗北したのではなく、リアクションが進化したのでもなく、そのゲームはたまたまリアクションをするチームが勝ったに過ぎない。自陣に8人のディフェンダーを並べていたから勝ったのではない。
戦術は、勝つためのもの、負けないためのものなど方法論は多くある。(ワールドカップは負けないためのものばかりで、質は低いと言わざるおえない)戦術はプレーヤーと観戦者が楽しいと思うものその志向によって時代と共に変化するものでもある。カウンターアタックは、ポゼッションであろうとリアクションであろうと有効な攻撃方法であり、フットボールと共に生き続け、時代が変わっても採用され続けるものだ。カウンターアタックとリアクションフットボールは混同してはならない。そしてゲームを支配する戦術はボールを保持することに勝るものはない。味方がボールを保持していれば相手は絶対に点が取れない。(味方が自ゴールにシュートすれば別だが、それはフットボールではなくなる。)そしてポゼッションスタイルをより進めるとダイレクトプレーに繋がる。ダイレクトプレーに勝る技術はない。メッシのドリブルは美しいが、ダイレクトプレーはもっと美しい。ポゼッションスタイルのフィニッシュはダイレクトプレーの連続から生まれて欲しい。ピッチの味方11人がダイレクトプレーをしている、こんなフットボールが最高に美しい。そしてダイレクトプレーを実現するポゼッションスタイルが最高の戦術だ。